港区議会では議員向けに学習会という名のお勉強会が開かれましたので、内容を簡単にですけれどもご報告を。情報が錯綜して正確だか不正確だかの話が一人歩きして不安だけが残る一方、「こういうの、メディアが率先してやるべきなのに」と改めて思った次第ですけども。
港区では先月から来年の3月までという長い期間で、感染症専門アドバイザーの先生を招いて感染症対策がタイムリーに行えるようなりました。区へのアドバイスはもちろんのこと、現場に近い感染症対策のプロならではの最新の知見は自治体が一番欲しているところだと思います。
そんな先生をお招きし、港区のYouTubeチャンネルでもオンライン研修として動画が作られました。7分半くらいの長さですので、是非ご視聴くださいませ。保健所も「発信が足りなくて」と悩んでいるようですので、私ごときでは拡散にはなりませんけれどもお知らせはできますので。
アルコールの手指消毒は指先メインで、ハンドクリーム塗るようにさせるのは間違いですよって。
フェイスシールドはマスクの代わりにはなりませんよって。
消毒液はスプレーしちゃダメですよって。
意外に知られていないことを解説してくれてます。へぇ〜って、ほぉ〜んってお勉強になります。自分も知らなかったこともありmath。
感染症対策で大切なこと
全般的なこととして、主に3つのポイントがあるようです。「感染が広がらないようにすること」、「誤解や偏見で苦しむ人を増やさないようにすること」、そして「対策で混乱しないようにすること」。
確かにどれも大切ですが、この勉強会の一番の目的と言っていいのが一番最後のやつかなあって。先生も言ってましたけどね、行政や政治に関わる人が混乱すると周囲の影響が大きいと。混乱というか、不正確なことを信じ込むというか、なんというんでしょうかね。我々議員という立場のヒトという生き物、「ああしてください」「こうしてください」と言いがちなわけですが、それが間違った情報が前提だと行政も困るし。
ただ、やってることがおかしいと感じるかどうか、正直これはもう人それぞれだと思います。こればっかは仕方ない。「そうは言うけれども、テレビに出ているこの先生はそうは言ってない」とかが良い例なのかも。
発生初期と今はまったく状況が異なっているようで
感染の拡大状況であったり、病態の変化もあるのかどうかはわからないけれども、4月と8月の数字を比較するのも意味がないくらいに状況は変わっているようです。
現時点で問題とされているのは4つらしく。
1. 国や自治体の方針や戦略が不透明
確かに国と都と区で権限も対処もバラバラなもんですからね。でもどこが一番中心になって方策決めるかというとやっぱり都道府県で、だから各知事さん達で対応が異なっているわけですもんね。お勉強会の中での解説では、特に東京都がやってることは不透明なことが多いようです。だからその下の23区とかでは「区独自の」とかやらざるを得なくなるわけ。
2. 報道や数字で迷走
先生曰く、実情を知る医療従事者が正しい情報を積極的に出していかなければならないと。誰が詳しい専門家かわからないという意見もあり、それは確かにその通りだなと思いますが、患者さん診てないの専門家という人ももメディアに多く出て発言していたようで、そんなのは画面のこっち側にいる人にはわかりようがないですからね。
3. 2〜4月ころの仕組みが今フィットしてない
状況が変わってきているということなので、これは致し方ないのかも。検査体制とかホテルの療養とかもそうなりつつあるのかね。数ヶ月で状況がここまで異なると、数ヶ月後の先を見通すのも難しいのかも。見切り発車も手なのかもしれなけれども、決断までのスピード感に差はあるよね。色々と。
4. 検査に関する誤解や混乱
ここが一番戦略を決められなかったり不安になったりを煽る点なのかもしれないということです。
検査の種類は?誰を検査すべきなの?
非常によくわかる資料を付けていただいたのでご紹介。なお、素人にもとてもわかりやすいオリジナルの資料はこちらで一般公開(コロナ制圧タスクフォース 新型コロナウイルスのNow 公立陶生病院 感染症内科の武藤義和先生)されております。スライド97枚とたくさんではありますが、タメになるので是非ご一読を。
検査戦略
検査数の分母がどのくらいなのかということもなしに戦略を立てるのは難しいとはよく言われます。ほら、陽性率とか云々色々ありますし。また、行政としての役割とその他を分けていることをご存知ない方もたくさんいらっしゃるという。
1. 行政が行う検査
公衆衛生の名のもとに、濃厚接触者への検査や空港などの防疫を行います。行政検査という名のごとし、これが行政の役割ですね。行政検査の件数は各自治体把握できてます。保健所なりが送り込んだ先の指定医療機関での行政検査も。
2. 医療機関が行う検査
医療機関が行う検査ですか。症状がある患者さんを診断したり治療するために必要になる検査です。ここに入れるのが適切かどうかはちょっと自信ないですが、ここの検査数の把握が国も自治体もできていないというらしいですよ。妊婦検診のスクリーニング検査とか、感染疑い関係なしに救急車で病院来た人にもやっているようで、たまたま怪我した酔っ払いが救急外来に来たら検査して陽性発覚とかもあるようで。
ま、医療従事者を守るために手術前に肝炎とかHIVとかの検査をするような感じであるとすると、それはそれで当然とは思います。たぶん。
3. 自費で受けられる検査
ここが最近増えてきているところですね。自前で検査ができるようになった医療機関がたくさんあって、港区内も増えているようです。心配でとにかく受けたい(受けてみたい)、ビジネス渡航目的の陰性証明(証明と言い切っていいのかどうかわからん)、スポーツ選手とかなどの営業継続検査、このあたりが該当します。もちろんここも検査数の把握はできてないようです。
ふと気になったのが、2と3で検査して陽性って出たら「隔離じゃー!んで濃厚接触者の特定せなー!」って保健所にすぐ連絡が行っててんやわんやになるんですかね?と、特に営業継続検査には疑問が感じられることもあるようです。
4. これから重要になるかもしれない検査
ここがこれからの自治体等で大切になってくるポイントだそうで、まだ実はどこも実施できていないそうです。
– 院内・高齢者等施設内感染などの防止
– 警察などエッセンシャルワーカーの健康支援
どこもできていない理由のひとつに、「どこが検査をする?」「どこが費用を負担する?」が挙げられるようです。ここは多分重要だというのであればスピード感を持って決断はできると思います。
が、問題なのはその先。「陽性者が出ました」は仕方ないとして、「で、どうする?」という。隔離?入院?ホテル療養?自宅療養?人員補充どうする?閉鎖しないようにどうやって運用していく?などなど、継続オペレーションに響いてくるわけですよね。
ただ、その後の運用を考えないままエイヤーとするのが専門家に言わせると無責任なんだそうです。だからやみくもに検査をするという前半だけしかできないのであれば、やる必要はないという判断が付くと。なるほど。エッセンシャルワーカーに限らず、一般にも当てはまることだと思いますけれども。
当然、各自治体もこういうことに悩んでいると思います。検査数増やせば安泰という考えではないのはこういうことで、そこから先は感染症対策から手が離れてしまうわけです。ただでさえ手薄な現場で人が減るかもしれない対策、これをセットで行うべきという考えが大切と。なる。言われてみるとその通り。
期限ありとは言いますが、今は講師の先生も区の中の人という立場ですので、ちゃんとそのあたりの知見なりはすでに共有されていると思います。で、お勉強会で見聞きしたことをそのまま要望とか申し入れというカタチで実績作りに忙しい議員も出没すると思われますが、行政には頑張っていただきたいですね。がんばれ。
8月の空気
世界でワーっとなり始めてから半年以上、新型コロナウイルスでわかってきたことは、「原因ウイルス」「広がりかた・予防方法」、そして「必要な医療」です。これを元に妥当な範囲の対策を立てることができていると、先生の見解はこのような感じです。発症から7日ほどで周囲への感染はほぼ無くなると、こういうこともわかってきているようです。
これからも接触と飛沫の予防は引き続き頑張らなければならないと言いますが、エビデンスを元に法整備を進めることやどこに公金を投入するかがポイントとなるようで。今の時期の専門家は、検査拡大やこれまでのこと意外に公金投入した方がよいという空気になっていると。ほう。
で、自分の立場から何ができるんだろうかといつも考えていますが、「ああしてこうしてと言いたいキモチ」と「自治体機能のロスが一番不幸になるから素人が余計な口を挟んではならぬ」と、常に半々な感情でこの数ヶ月。なので今回はひとまず、議員向けの勉強会しましたというお知らせだけじゃなく、たくさんの人に知っていただきたいその勉強会の中身をご報告することが精一杯。
以上。物足りなかったらすんません。先月お送りした報告書にも書きましたけれども、この機会にかかりつけ医を持つことを考えておいていただきたい。若い方も含めて。身近な医師の判断は大切ですよ。
議会事務局がお写真を撮ってくれてたんですけれどもね、議場で広々したところでお勉強会したので私最前列じゃないですか。で、このお写真が港区議会Facebookでも使われましてね、しまった!と思ったわけですよ。
お気に入りのてぬぐい猫マスク(既製品)していけばよかったと悔やむ。以上。