この秋っぽい季節になると抗アレルギー剤が欠かせなくなって早3、4年。朝起きると蕁麻疹、日中も不思議に蕁麻疹、お風呂に入ると蕁麻疹。小さい頃は寒冷蕁麻疹で苦しみ、大きくなるにつれて解放されたはずなのに。懐かしいでしょ、と戻ってこなくていいのに。
そんな季節の抗アレルギー剤、かかりつけの先生にちゃんとキチンと処方してもらっています。『内資企業応援期間なので、◯◯社のxxにしてもらえませんか』と言い続けて3、4年。日本の製薬メーカーに頑張って欲しく、このちょびっとの貢献が日本企業の研究開発費に回ってくれれば良いと、研究試薬のひとつにでもなってくれれば良いと、後発品ではなくて是非とも先発品をと、そう願っているわけですよわたくし。
先発品と後発品。文字通りそのまんま『先に発売された商品』と『後から発売された商品』でありまして。前者はオリジナル(いわゆる新薬)、後者をジェネリック医薬品と言います。耳にしたことありますよね、ジェネリック。
数年前からなんでもかんでもジェネリックジェネリック、とにかくジェネリックに注目されてるわけです。それは何故なら医療費を抑えられる可能性があると。それは何故ならジェネリックは価格がお安めだから。先発品と何が違うのか、一番大きいところは『発売するまでかけた時間と費用』です。
新しい薬って、発売されるまで一般的に10〜15年の期間と数百億円の費用がかかってます。物質とか化合物発見からならもっとかかる。しかも時間と費用があれば製品化できるっていうものでもなく、ちゃんと効いて安全ですよという結果を出さなければならないわけで、もう企業にとってある意味ギャンブルのようなものです。ハイリスク、ハイリターン。しかも時間と費用をかけ過ぎるとハイリスク、ローリターン。
これがジェネリック医薬品になると、ローリスク、ローリターン。新薬と比較して、医薬品の承認が下りるために必要な試験の数と質が断然に少ないわけですね。15年も数百億円もかかりませんもん。数年と1億、2億くらいでいけちゃいますもん。でも価格は安い。
ジェネリック医薬品ってそもそも何よと。先発品の特許が切れたから同じ有効成分を使って同じ病気に対して同じような効き目の薬を作りましょう、そうしましょう、これがジェネリック医薬品。有効成分が同じであるからって効き目も同じとは言えないのかもしれないのがジェネリック医薬品。だって作り方が違いますもん。
細かく言うとすごく長くなるので、ものすごく簡単にシンプルに違いを説明しましょうか。薬を大福に見立てて。
有効成分:あんこ
先発品:有名ブランド大福
原料: 小豆(xx産)
材料:和三盆糖、塩、水
皮:求肥
後発品A:
原料 小豆(◯◯産)
材料:カロリー抑え目砂糖、塩、水
皮:寒天
後発品B:
原料 小豆(小豆缶)
材料:グラニュー糖控えめ、塩、水、いちご
皮:いちご練りこんだゼラチンを求肥とミックス
こんな違いがあります。極端な例え。
作り方だけではないんですよ。
先発品:あんこ発見経緯、あんこが人体に与える影響試験、あんこが将来の子孫に与える影響試験、あんこ吸収・代謝試験、デザート大福満足試験、あんこ長期保存試験、大規模大福美味しさ試験などなど、20を超える試験データ必須。大福が痛みやすいとか、美味しくなかったら商品化の許可おりません。
後発品:あんこデータはもう先に商品化した企業さんが色々やってくれてるからその辺全部省略して、あんこ試験、大福食べ比べ試験くらい。80%〜120%くらいの誤差ならオッケー。
そりゃジェネリックは時間もお金もかからないですよ、一番大変な試験をたくさんすっ飛ばしてるわけですから。甘いものというカテゴリーで分けたとしてあんこが包まれていればなんでも大福だ!いちご大福は大福とは認めぬ!そんな大福論争もありますが、医薬品でも似たようなこともあるわけです。
ここまで書いちゃったら、ジェネリック医薬品は良くないのかと思われる方もいると思います。答えは『そう言い切れない場合だってありますよ』です。ジェネリックメーカーの継続的な研究だったり、品質の追求だったり。
『うちの商品はですね、オリジナルと本当に同じくらいの味と食感を追求するために、最近こんなに大きめの試食会を開いてアンケート取ったんですよ!もちろん食中毒含めた食の安全もしっかり全国のお客様から情報を積極的に集めてますよ!』なんて卸業者に定期的に積極的に営業するところもあれば、『あー、質問はお客様センターに問い合わせていただけますー?』なんてとこもあるでしょう。
精力的なジェネリック企業があったとして、シェア猛追してくる危機にあるオリジナル企業は『新商品!うぐいすつぶあん大福!』とかを計画したり。ジェネリック普及はいいんですが、オリジナルの開発も応援していかないことには度肝を抜かれるような新商品がでないんですよね。つぶあんが度肝を抜く商品化どうかは置いといて。いちご大福のほうが度肝抜かれたわ!というご意見も置いといて。
つまりはですね、ジェネリック医薬品は似て非なるものなわけでですね、完全に同じではないということをご説明したくてですね。でも決して使ってはならないものであるということではありませんが、効果安全性を疑問に感じる医師もいるのも確かです。データがすべての世界だし。
学術発表や論文では『薬を切り替えても違いなし』『切り替えたら効果減弱』『安全性に疑問』というようなものちらほらありますし、一概に効果安全性についてはこうだ!と言えない世の中。薬自体が是が非かという個人の考えもありますしね。
薬局とかでもジェネリック採用率で診療報酬が〜という基準があったりしますけれど、国民皆保険制度の日本で医療費削減がジェネリック普及しかないのかというのに疑問を感じるので、もっともっと国会とか関連各所では話し合ってほしいものです。診療報酬を下げないという前提でですけど。
ちなみに、万が一港区で『処方薬は全部ジェネリック(あるものは)に!』なんて案がでてきたら、私個人としては反対の立場を取るでしょうなあ…。でも、とある条件付きなら賛成…とある条件付きなら反対…。区民のみなさんの健康リスクを考慮した上での条件付き。
医薬品にかかわらず、どこどこの国を参考にというのがあんまり好きではなくて。国によって文化も違えば背景も違う。例えばアメリカだったらサプリメントが普及している理由は無保険者が多くて病院にかからない予防という概念がどこよりも発展してるし、ジェネリックが多いのもそもそもの医療費負担が大きいからせめてものという気持ちもあるし、まずまずもって日本のお医者さんのように1日何十人も患者さん診ませんし。
ちなみに我々(薬に関わるお仕事の人達)の間ではジェネリックのことを『ゾロ』ともいいます。先発品の特許が切れるタイミングを狙って色んなメーカーからジェネリック医薬品がゾロゾロ出るから『ゾロ』。これだとイメージ良くないからジェネリックという名称普及をと。ジェネリックってもともと『一般名』という意味ですしね。
すっごい例えばのお話だけだけでお送りしてみました。どちらかというと和菓子派です。それではみなさん、また今度。