北海道はでっかいどう ナースプラクティショナー編

海外生活をしていた頃、帰国の度に東京タワーをみて『帰ってきたわー』と感じていたわけですが、札幌の方もひょっとしてテレビ塔をみる度に『帰ってきたわー』と感じるようなランドマークなのかしら。そんなことをふと考えてみたり。そんなわけで北海道に行ってきました。

 

ナースプラクティショナー』という言葉を初めて聞いたのは若くてぴちぴちだった20数年前。そういう勉強というか研究というかをやってる人と知り合いになり、20数年経って今となってはその人は日本のナースプラクティショナー養成の第一人者に。

 

ナースプラクティショナーとは、例えばアメリカでいうと…お医者さんと看護師さんの中間のようなポジション。診断もしますし投薬もしますし、お医者さんの指示がなくとも自分の判断で医療処置を行える、一般の看護師さんのお仕事権限をちょっぴり拡大したような上級看護師さんのようなお仕事のことを言います。日本ではナースプラクティショナーはありませんけど、2年ほど前から『特定看護師さん』という似て非なるポジションができました。『特定行為研修を修了した看護師さん』を指すわけです。ナースプラクティショナーは国内においては今も昔も賛否両論です。知ってます。

 

まず、なんでこういうポジションが必要になるのかという検討されてきた経緯を簡単に。『2025年にいわゆる団塊の世代と呼ばれる層が75才以上の後期高齢者になって、保健医療とか社会保障がばばーんと跳ね上がるよ』ということとか、『医療費削減とかなんだか理由をつけがちだけど、高齢者が増えるし病院ベッド数とかの問題もあるし要は在宅シフトせざるを得ないんだよ』ということとか背景にありまして、そこで活躍が期待される訪問診療・訪問看護の観点からアメリカのナースプラクティショナー制度が参考にされてきた、と聞いてます。

 

ただ、法律も文化も事情も保険体制も異なるものをスッと導入できるわけもなく、いろんな話し合いが行われた中での妥協点が、『特定の行為について研修受けた看護師さんなら、チーム医療の一員としてお医者さんの指示のもとで患者さんごとに手順書とか役割分担とかしっかりさせて、そういうことでいいんちゃう?』となったわけです。その研修制度なものが法律的にもスタートしたのが2015年10月。確かそんな感じ。

 

北海道医療大学大学院。北海道で唯一、国内では3番目のナースプラクティショナー養成…もとい経験ある看護師さんに特定行為研修を行う教育機関。いろいろとごっちゃになるのでここでは『特定看護師さん』に統一しますね。

 

そんな特定看護師さんの存在、色々と意見は色々な業界からありますが、活躍でやはり期待されるのが訪問看護業界。近い将来必ずやってくる超高齢化社会なわけですが、よく介護予防とか言葉を聞くでしょう。正しい表現は難しいですけど、要は先手を打って病気にならないような健康づくり(トレーニングとかエクササイズとか健康意識を高めましょう)とか、健康診断をしっかり受けて早め早めに必要なら治療しましょう(健康意識を高めましょう)とか、行政側が呼びかけることは限られてます。

 

あんまり大きい病院にかからないようにできる部分は努力しましょうね、という根っこの部分はあまり触れられなくとも、とにかく人口に対して患者さんとの比率というもののバランスが取れなくなってくるわけですよ。表現はアレですけど、すっごくわかりやすくいうと『病院で死ねなくなるかもよ』です。そこを在宅医療だとか訪問医療だとかで病院以外でカバーできるものはやろうじゃないですか、というのが地域包括ケアシステムの概念です。多分。だから特定看護師さんという存在がフィーチャーされてきたと思われます。多分。

 

特定行為に関わる看護師さんの研修制度、法律的に許可というか認定されたのが21区分38行為。大まかにわけで21項目、その中でひとつなり複数なり下の項目がある38行為。どういうものかというと、例えば栄養カテーテルに関わるものとか、体液出したりするドレーンに関わるものとか、床ずれ的な褥瘡(じょくそう)の処置とか、点滴とか感染症とか糖尿病の血糖コントロールに関わるものとか。プライマリーケアに関わるものが多いです。ちなみにこの21区分38行為以外については、お医者さんから具体的指示があれば研修とかなくとも実施してよい的なこともあり、研修制度が必要になる理由というのがよくわからなくなることもありますが、まぁ難しいことはさておいて。

 

そんな特定看護師さんと呼ばれるようになるためには、半年〜1年くらいの期間で特定の場所で研修を受けるか、大学院に通うか。経験ある看護師さんを対象としているわけですから、大学院修士レベルが相当ということらしいです。高度知識と高度技術、論理的思考で正しく適正な治療またはケアができるよう、そういうお勉強が必要となります。業界内で賛否両論いろいろあるようですけれど、そういう幅広い知識と思考力と実践力というものを併せ持った認定看護師さん、2025年までに10万人という計画があったそうですが、『とりあえず研修すればいいや』な類のものではありませんのでなかなか難しい。

 

心臓疾患患者シミュレーターのイチロー君。いろんな病気の心音だったり呼吸音だったりを再現してくれるお高い優れもの。こういうのも使って医学的にも論理的思考、判断力を培うお勉強もされるわけです。私も色々聞かせていただきましたが、よく考えたら異常な雑音聞く前に正常の音を知らないから区別つかんわ。なんか違うのはわかるけど、それが何だかさっぱりわからないのは素人だからです。

 

2025年問題に向けて、看護師さんに関してはふたつの両極端な可能性があると言われています。ひとつは『病院での就職難』、そしてもうひとつは『病院以外の大きな需要』。前者は診療報酬とか患者さんに対する看護師の配置数が云々的なやつで、病院がたくさん看護師さんを必要としなくなる状況がでてきてしまうかもしれないということ。それと同時にこれからの時代は看護師さんの役割というのがとても大きくなるわけで、病院以外で需要があるというか存在が必要となるというか、そういう世の中になっています。

 

『医療的に専門の人がひとりでもいるようにしたらなんか安心だよね、お医者さんだと色々アレなので、じゃあとりあえず看護師さんでも』

 

色々なニーズがでてきているこの世の中、対応をせまられる行政もそんな感じの風潮があるように感じます。今の世の中、保育園とかそういう感じになってますよね。保育園だけじゃなくともだけど。

 

看護師さんって色んな意味で大変な職業だと思います。企業でも公務員でも保育園でも病院でも在宅医療でも、ある意味よりスーパーマルチな方面で活躍できるすごい職業です。ただし『看護師』という国家資格の看板が何よりも先にでている印象で、なんでもかんでも看護師さんがとりあえずいればみんな文句ないだろう的なモノの考え方があるようなそうでもないような。人材を求める側も求められる側も。

 

そんな中で認定看護師さんはこれからどのように育成されて、どのようなニーズで世の中で活躍されるのかとても気になるところ。医療過疎というよりは医療密集の港区において、私個人としてはこれからどのように看護師さんという存在を確保して、より良い港区の医療体制に繋げていってもらえるかというところの行政の手腕に期待をしております。