中途半端な話をひとつ。

製薬会社で働いてましたっていうと『薬剤師さん?』って聞かれることも多々あり、その度に『いいえ、違います』と答えてガッカリさせたこともあるし、一応研究職でしたっていうと『じゃあ白衣着て研究してたの?』って聞かれては『いいえ、違います』と答えて更にガッカリさせたこともしばしば。そう、昔からそうなんだけど、自分の職歴は非常にファジーでビミョーだ。そしてそれを上手に説明できる自信がない。

 

お勤めマン。

製薬会社の中でもジャンル的には『新薬開発』と言われる牧場で、その中でも『臨床開発』という柵の中、そして画期的な薬のタマゴを大切に大切に育てるいわゆる『治験』という小屋の中。とかいって病院に詰めて患者さんの対応をしたり患者さんのカルテを常に眺めているタイプの役割でもなく、画期的な薬として世の中に出した後に必要な人を助けている未来を全然前の段階から色々妄想し、そのためには今から何をどうするかということを机上の空論で延々と考えることもあれば、充分に説得できるためのデータを集めて解析したり、一筋の光を見失わないように見失わないように現実をみていくというお仕事の類。

 

おお、なんかこう表現するとちょっとカッコいい。なんだろう、要は『たくさんの家庭の食卓に並べられるように、この謎のタマゴを孵して育てて一般流通できるようにがんばる』という、謎のタマゴを発見した研究者と一緒に働くプロデューサーみたいなお仕事。

 

正しい説明かどうか...

プロデューサーというのがポイントで、直接タマゴと寝食を共にする飼育員ではなくて。例えば養鶏場とかで例えると(たとえが正しいのかどうかはわからん)、オーナーとか飼育員さんとか出入りする獣医さんとか、飼料業者さんとか、はたまた別の養鶏場のオーナーさんとかと一緒に努力して、謎のタマゴの取り扱い説明書とか孵化しても人に危害加えないですよとか美味しい召し上がり方とかを作り上げる。そんな業種のそういうポジション。多分。

 

タマゴが孵化しなかったら終わるし、タマゴの量産に失敗したらそこで終わるし、栄養価高いはずのタマゴが全然高くなかったとわかったらそこで終わるし、タマゴを誰でも孵化できるよう取説作ってもグレムリンみたいな凶暴なやつしか生まれないならそこで終わるし。すごい良い子だったとしても成長過程でどこの何かわからないエサをひと握りこっそり与えるような人がいないかチェックもするし。

 

そう、非常に中途半端な上、やはりビミョー。理解はしなくともいいけど、覚えておいてくださいね。新しい薬ってドブ川から砂金をさらうようなもので、延べ棒にするためにものすごい色んな人達の努力と10年以上の年月と数百億円とかかかる時もあるんです。

 

だから色んなこと考えられるように勉強的なことは必須で、国内外の大学とか病院とかその域で著名なドクターや研究者とお話して色んなことに想いを馳せることもあれば、ドクターに色んなこと教えてもらったり課題の解決策を一緒に考えるために自分で色んなこと勉強して知識を付けたり、色んなもののルールや取り扱い説明書的なものを地味に作ることもあるし。

 

人生の転機はひょっこりはん

この業界、ひょっこりと入ったのがアメリカでした。そこで結局5年くらい働いた後に『やっぱ日本に帰ろう』となって、日本ではバイオベンチャー2社とそこそこの規模の1社を経て、その業界15年たたき上げできたわけ。

 

あっ、まぁたたき上げられる程のアレではないけど、色んな意味で叩かれたこともたくさんかなあ。別の意味で。ここは日本だとか、ベンチャー上がりで組織が分かって無いとか、意見言うとナマイキだとか。

 

そんなことを考えていたら、会社でお勤めしていた時と今区議会議員となってお役目果たそうとしている中で、『ああ、自分が置かれている環境って何も変わってないんだな』ということに気付きました。

 

なんと言うんでしょうかね、自分で考えて仕事を作ること、大きい目標のために障害物を探し、課題を探して解決する選択肢を考えると。スケジュール考えて逆算して、よりベターに出来ることを探す。しかもここは日本だ、組織だ、新米が意見言うんじゃねえよ、減らず口聞いてんじゃねえよという環境もそんなに変わらず。ああ、何もかも全部今まで通り。だからなんも苦にならないわけだアッハッハ

 

あ、いや、嘘です。強がりました。

 

10年ちょっと海外で暮らしてた中で、日本面白いなあってこともたくさんあるし、いい国だなあって思うこともたくさんあるし、めんどくさくてややこしいなあって思うこともたくさんある。もちろん不思議なことも。そう、高校の途中から10年ちょっと色んなことを経験していたら中途半端にアメリカナイズされていると言えばその通りで、日本を分かってないとか言われてもその通り。

 

だからずっとわからないんですよ、先輩後輩という意味が。英語でも表現できませんしね、先輩後輩って言葉。

 

あ、業界の話からだいぶ逸脱してしまいました。

何が言いたかったかといいますと、人に理解してもらえるように説明するのって、すごく難しいなあって。前職のことすらわかりやすく伝えられないのに、議員として何やってんのかなんて説明できるわけがない

 

『最近どういうことをやってんの?どういう相談とかあるの?』

『えーと、道路とかゴミとかネズミとか学校関係とか。あっ詐欺の電話のお話あったとかもきたし、愚痴も無くはない』

『…議員ってそういう話をどうすんの?』

『これ見よがしにその場で役所に電話して言っといたから!で終わす人いるけど』

『あんたも?』

『それで済む時はいいけど、そういうの嫌なので少しでもクレームとか少なくなるように全体のスキーム考えることが好き』

『できるの?』

『できるかできないかは考えてみないとわからん』

『地味だね』

『うん』

『地味でいいの?』

『うん』

『で、考えるだけ?』

『調べなきゃ考えられないからなんか色々調べるよ』

『すぐ考えつくの?』

『いや、これだ!っていうものが降臨しないとなかなか』

『降臨』

『降臨』

 

オチも降臨しなかった。なんだこれはスランプか。